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数ミリの厚さの革に、どこまでも深い色を


glambがレザー作りにおいて追求するのは素材の色。
研究を重ねた鞣し、そして時を惜しまぬ染め。
ハサミを入れれば裂けてしまう、愛すべき生地の中に果てしない世界を。


  • 工場に届いたばかりのレザーは右の写真のように真っ新な色合い。職人はレザーの状態を確認すると、原産国で既に鞣しが施された革を樽に収め、再び鞣し剤を投入します。既に防腐処理の済んだ革をなぜさらに鞣すのか。その理由に、glambの革作りに対するこだわりが込められています。
  • 現代において革の鞣しの方法はタンニン鞣しとクロム鞣しの二種が主流。植物由来の成分を用いたタンニン鞣しのレザーは風合いや経年変化のポテンシャルに優れますが、仕上がりが非常に固く洋服に使用することは不可能。クロム鞣しは衣料品に仕立てても十分な柔らかさを持ちますが、風合いにおいてはタンニン鞣しに譲ります。

    glambのレザーはクロムでしなやかに鞣した後、タンニンを用いて再鞣し。さらには染色の際にもミモザ由来のタンニンを混ぜることで素材本来のポテンシャルを最大限に高めるのです。
  • 乾燥させたパッチで染まり具合を確認。既にレザーは真っ黒に染め上げられたかのように見えますが、職人は一度樽の水分を抜くと、再び染料を加えて樽を稼働させます。
  • glambが行うこの執拗なまでの染めは芯通し染めと呼ばれる技法です。現代の皮革生産において着色の主流となっているのは顔料仕上げ。革の上に顔料をコーティングして着色するため、デザイナーが指示した色を均一に再現でき、品質が安定するため大量生産に向いた手法です。しかし、顔料仕上げは革表面をコーティングで覆い尽くし、獣たちが育んだ風合いに蓋をします。
    それに対して、glambは下染めで芯に色を定着させた後、さらに上染め。時を惜しまず、塗装ではなく染めによって着色を行うことで、素材の表情は仕上げの後も生きたまま。だからglambは樽の中で黒いレザーをどこまでも黒く染め上げていくのです。
  • 革に最終的な質感を乗せるべく使用するのは上の写真にあるスプレーマシン。ですが、この段階で加えられる着色はごくわずかなもの。下染めが十分でない革は、後から染料でテクスチャも含めて塗り潰さない限りはチャコールグレーがかった色になってしまいますが、glambのレザーは芯通し染めにより漆黒の仕上がり。料理の仕上げに誰も気づかないひとつまみの砂糖を加えるように、装置でフィニッシュを行います。
  • 塗装を終えたレザーは出荷前の最後の工程となるプレスへ。厚みのあるレザーは波打ったままだと縫製の妨げとなるため、熟練の職人が1枚1枚プレスマシンを通して端に至るまで丁寧に伸ばしていきます。

    ここから先は既に公開中となっている“LEATHER CRAFT vol.1”をご覧の方はご存知のはず。縫製工場で裁断、縫製、そして加工を施され、皆さんの住む街へと旅立っていくのです。

    こうしてご紹介を続けてきたglambのレザークラフト。そこにはブランドの揺るぎない美意識、職人の妥協ない加工、そして素材となった獣が生きて育んだ「皮」を最も美しい形で届けたいという「革」への敬意が宿ります。

  •  「皮」と「革」、よく書き間違えられることも多いこの二文字を隔てるのが鞣し。動物の体から切り取られたままの「皮」は時間の経過とともに腐ったり、水分が抜けて硬化してしまいます。それを防ぐため、動物の革からたんぱく質や脂質を取りのぞく行為が鞣し。人類の文明誕生と同時期から鞣しは行われており、古くは動物の油や植物の汁に浸け込んで行われました。近代になると植物由来の成分を用いたタンニン鞣しの製法が登場。そして現代では化学薬品を用いたクロム鞣しの技法が開発されて、主流に。革を柔らかくすると書いて“鞣し”。技術の発達とともにレザーはより柔らかく、より早く生産されることができるようになり、その発展は人とレザーの関係に強く影響を及ぼしてきました。