

glambがブランド設立時から掲げる
ブランドコンセプトである"Grunge for Luxury"
グランジの精神はデザインに宿り
ラグジュアリーなクオリティは素材や仕立てに宿ります
このルックブックが初刊から60号を数える今季
ブランドの洋服作りの姿をドキュメント

- 01
The
Denim Craft
職人たちの美学を乗せて
バトンつなぎに仕上げられていく
ブランドのデニム
- 縫製
- SEWING
職人がその人生を捧げて集めた
ミシンの名機の数々とともに
ブランドのデニム縫製を担うのは、瀬戸内海の傍らにある小さな縫製工場。従業員は3名、工場というよりはアトリエと呼んだ方がしっくりくるかもしれません。この仕事場でミシンを走らせるのが御年77歳、半世紀近くにわたってデニム作りに携わる内山清氏です。
glamb のデニムの表情の鍵は、内山氏が長年に渡って集めた数々のミシンと、それを操る内山氏の縫製技術にあります。
上部で内山氏が操る大型ミシンは縫製業界では一般的な機体ですが、内山氏はそれを原型を残さないまでカスタム。剥き出しの金属部品で構成された針回りは、知人の鉄鋼業者に依頼して組み上げたもの。自らの身体の一部として駆動するよう極限までチューンされた一台がスピードと正確性を生み出すのです。
さらに内山氏はヴィンテージミシンの名機であるユニオンスペシャルも保有。20世紀中期にアメリカで生産され、1 台150万円以上と当時の5倍の高値で取引されるミシンです。
高騰する価格とは裏腹に、ユニオンで縫えるのは裾のチェーンステッチのみ。用途が限られたユニオンがなぜこれほどまでに求められるのか。それは、ヴィンテージ期のデニムに見られる特徴的な裾の色落ち、パッカリングが現れるためにはユニオンが不可欠だからです。
このミシンの最大の特徴はヘッドから斜めに飛び出た針。硬いデニム生地を縫う際、現在のミシンは生地に対して直角に針を落として縫うことができますが、20世紀中期にそれだけの馬力を持ったミシンが存在しませんでした。そこで用いられていたのが機構に負荷をかけずに硬い生地を縫い上げることのできる斜め針のユニオンでした。
このミシンで裾を仕上げると、直角針では生じない「うねり」が縫い目に刻まれます。このうねりの凸面が長年の着用で削られ、斜線状のパッカリングが現れるのです。
内山氏が縫い上げたデニムがその後、どのように仕上げられていくか、今度は加工を担う工場へ向かいます。






- 削り
- SHAVING
「削りは絵画」
職人はそう語りました
きれいに縫い上げられたデニムを削り、砂を吹きかけ、最後には色が落ちるまでタンブラーで洗いにかける。常識的に考えれば馬鹿げたような行為に人生の大部分を賭けるのがglamb のデニムを作る職人たちです。
日本の岡山から広島にかかる瀬戸内海沿いの一帯は、デニムの名地。現在、デニム加工は中国やバングラディッシュ、トルコなど世界各地で行われていますが、その技術の多くはこの地で誕生したものなのです。
glamb のファクトリーもそうしたデニムの技術革新を生み出してきた老舗の一つ。オリジネイターだからこその、非効率であってもクオリティを追い求める頑固な職人集団です。
「削り」の工程の中でも特に軸となるのは「擦り」と呼ばれる工程。ヤスリを用いて生地表面を削っていくこの工程は、昨今では専用の重機で行われることも多いですが、glamb のファクトリーでは黒板消しのような形状をした特製のヤスリで仕上げられています。なぜ手仕事にこだわるのか、職人に聞くと「擦りとは絵を描くような作業だから」と答えます。「擦りの際には今、目の前にあるデニムではなく、洗い上がった後のデニムを思い描く必要があります。そのための絶妙なラインを描くためには、時間がかかっても手作業の方がずっと仕上がりがいいんです」。
その言葉通り、glamb のダメージデニムは複数本を同時進行することなく1本1本、職人が向き合って仕上げられています。glamb のデニムを手にした際は左ページを片手にその色落ちをぜひご覧ください。職人が描いた手仕事の軌跡がそこには刻まれています。



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- ヒゲ板
色落ちの設計図となるのがヒゲ板。板の凸の部分に擦りを加えることで線状の色落ちが刻まれる。glambは数々のヴィンテージデニムの色落ちをサンプリングしたオリジナル板を使用。
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- 擦り
デニムは擦るだけで色落ちをさせているのではなく、擦った後で洗いにかけることで色落ちをさせる。最終的な色合いを思い描き、ヒゲ板に沿って過不足ない擦りを加えるには熟練の経験が求められる。
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- 立体アイロン
擦りによる削りよりもさらに濃淡の付いた色落ちを表現するのがこの工程。職人が穿き皺を再現するべく手作業でタックを作ってアイロンで固定。ここに擦りを加えると凹部分は色落ちせず残り、切れ味のあるヒゲが生まれる。
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- ブラスト
擦りと立体アイロンが横皺の色落ちを表現するのに対し、腿部分の縦落ちを表現するのがブラスト。鉄鋼工場で塗装剥しに使われていた設備を転用した重機を用い、細かな砂を生地表面に吹き付けて表面を削っていく。
- 仕上げ
- FINISH
工業仕込みの重機を用い
加えていくのはmmの仕上げ
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- 穴開け
ユニオンスペシャルでの仕上げが生み出すパッカリングにダメージを加える。ヴィンテージデニムに見られるこの斜線状の色落ちは凸部分が周囲に擦れることで生じる。その風合いを演出するべく、アタリの頂点部のみに穴を加える。
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- 汚し
バーナーよりもさらに細かい、オイル染みを模した点状の汚れを加えるのが汚し。数ミリほどの小さな点を塗料で乗せるのみだが、この一点がヴィジュアルに生々しさを生む。
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- バーナー
ハンディサイズのバーナーを用いた焦がしもglambのファクトリーが得意とする加工の一つ。生地表面に1分ほど直火を当てることで要所を焼き上げる。
glamb のファクトリーでデニムにダメージを加えるために使われるのは工場で使用される重機を転用し、改良を加えた独自の機器です。この地でこうした加工技術が発達した背景には地政学的な条件もありました。
この瀬戸内海沿いの地域は古くからの服飾産地であるとともに、数多くの鉄鋼や機械生産を行う工場が居を構える工業地帯でもありました。さまざまな重機が揃う同地だからこそ、それらを洋服に転用するというさまざまな試行錯誤が可能になったのです。工場労働の現場で刻まれたヴィンテージデニムの経年変化を、工場の重機を用いてダメージを加えることで再現する。そんなロマンに溢れた物作りでglamb のデニムは作られているのです。
上部で紹介したブラストはその代表例ですが、洗いあげたあとのデニムに施される仕上げにおいても、バーナーや穴開けに用いられるリューターなどに工業的なアイデアを見ることができます。しかし、これらの工具で加えられる変化は前頁で見た擦りに比べれば非常にわずかなもの。すれ違った人はほとんど気づくことがないでしょう。
ですが、ここまでglamb のデニム作りを見てきた皆さまにはそこに宿る職人の思いを感じていただけるのではないでしょうか。01の写真、裾に刻まれたパッカリングをご覧ください。内山氏のユニオンスペシャルによる縫製と、頑固な加工技術が掛け合わされたこの裾の表情。ヴィンテージの表情を追い求める職人たちのラグジュアリーな手仕事がここに完成しました。

- 01
Paraffin coat
unplugged denim
今季、glamb のデニムクラフトの最新技術を用いて生まれたのがパラフィンコーティングのUnpulugged denim。なんとここまで見てきた通常の工程でパッチワークデニムを仕上げながら、仕上げでそれを全て黒く塗り潰すという大胆な仕上げを行っています。これまでブランドが作り上げてきたものにとらわれず、時には自己否定すらもいとわず進み続けるブランドのマインドが閉じ込められた1本です。
Denim Item

2003年、“Grunge for Luxury”をコンセプトにデザイナー古谷完によって設立される。以後、グランジロックスタイルを基調としながら、ストリート、モード、ワークなど、様々なスタイルを融合したデザインワークで国内シーンを牽引。ミュージシャンやタレントにも多くの愛好家を持つ。
