

























ここ2年ぐらい、毎コレクションのデザインの為に海外へ渡りインスピレーションを得ていたのだが、
今回は日本の小さな町で、数日間山籠もりのような形でデザインをすることにした。
目の前に広がるのは山と田んぼのみで、今までに経験したことのない“無”の世界だった。
普段聞きなれていた騒音や人の声、少し歩けば変わる街並みはここには存在しなかった。
はっきり言ってしまえば、刺激のない退屈な環境だ。
今までは、海外の芸術作品や現代アート、そして息をのむような絶景を見て感じたことを
洋服のデザインやテーマにアウトプットしていた。
でも僕はあえて、この究極の“無”を求めてこの町を選んだ。
恐らく、自分を試したかったんだろう。
あまりにも何もない世界に身を置いた時、自分はどんな想像を巡らせるのだろうか?
滞在先の窓から外を眺めていた時、綺麗に背が揃った水田の稲が風によってなびいた。
まるで、誰かがそこを駆け抜けるかのように、稲は一方向に流れていった。
波のように動く穂稲に太陽の光が反射してキラキラと輝いていた。
その光を追うように、影も同じ動きをしていた。
どこかしら悲しさを感じるのは、その影がいつまでも辿り着くことのない光を追ってしまっているからだろうか?
僕は始めて、“風の影”を見たような気がした。
普段僕が住む東京では風になびく草木にも目が行かないほど、
日々せわしなく生活していたのだろうか。
それとも、この無の境地が見えるはずのない風の生命に気づかせてくれて、
僕のイマジネーションを膨らませたのだろうか。
デザインを進めていくうちに、大地を駆け抜ける“風の影”の人物像のようなものが思い浮かんだ。
彼が翼のように広げる腕からは長い布のようなものがなびいていて、
赤いドレスのような洋服が緑の草木、青い空とのコントラストで美しく揺れる。
女性とも思える雰囲気で、顔を確かめたくても逆光で表情が分からない。
彼が追いかけていた光は、掴むことができたのだろうか____?
今季glambがお届けするコレクションは、
目で見る事の出来ない“風”を心で感じ、描いたアイテムたち。
“Blow”シリーズとなる、長いテープを袖からぶら下げるディテールを思いついた。
レザーやメタルチェーン、ビーズなど様々な素材で展開するこちらは
使い方も多彩で、袖につけて腕に巻き付けたり、
ベルトループから垂らしてキーホルダー感覚でも着用可能だ。
“Blow”シリーズの使い道は、手に取った方に自由に想像して頂きたい。
僕が感じた“ゼロからの創造”を体現出来る遊び心あるデザインになっています。
自分の想像力を試す環境を選んだ今回のコレクションは
これを読んでいる方にはどう見えているのだろうか?
もしあなたが現在の自分に疑問を感じているなら、
無の境地を探すことをお勧めします。
そこに見える世界はきっと、あなたにしか見えない特別なものになる。
Have you ever seen the Shadow of the Wind?
I have.
glamb Head Designer,
TK